愛してるの期限が切れる前に

「お子さんの画像を流出されたアカウントは十六歳の女子高生のものだった。家族が撮った入園式の動画で花ちゃんを見つけて投稿。承認意欲は怖いね。現在は削除済み、法的措置に入っている」

 渡された資料を一瞥して、「続けろ」とだけ伝えた。
 軽い気持ちでの投稿だったのだろうが、我が子を危険に晒された以上、法的責任は取ってもらう。

「玲桜の親父さんは、この件に飛びつくだろうね。ようやくお前の足をすくうことができる千載一遇のチャンスなんだ。お前、よほど恨まれてるのな」
「ももたちに危害が及ばなければどうでもいい」
「確かに、お前は百花ちゃん関することしか感情が揺れないもんな。四年前もあいつ、若森だったか? 俺は、お前がマジギレした姿初めて見たけど、まじで漏らすかと思った」「当然の報いだ」

 若森は、百花を罠に嵌めて、手を出そうとした卑劣な男だ。
 なぜ、百花は若森とホテルに行ったのか。
 理由を探って明らかになったのは、あの男の低俗で浅はかな独占欲だった。
 百花を万引き犯に仕立て上げ、窮地に陥った所を颯爽と助けた若森を百花が無下にできないのは当然だ。若森は百花に恩を売り、百花を呼び出した。そして、無理矢理ことに及ぼうとした、というのがあのキスマークの顛末だ。
 若森の百花を見る視線が、性的嗜好なものであることに玲桜は早くから気づいていた。その不快さは百花も感じていたのか、必要最低限の接触しかしてこなかった。
 あの男も、これまでは水島という存在があったため、暴挙には出られなかったのだろうが、水島夫妻が移住したことで気が大きくなったのだろう。
 少し揺さぶりをかけると、聞きたくもないことまでべらべらとしゃべり出した。
 不愉快な雑音を止めるために、多少は力でねじ伏せたが、百花に触れたくだりあたりからよく覚えていなかった。
 気がつけば、気絶した若森が足下で伸びていたからだ。