愛してるの期限が切れる前に

「はーちゃもいくのっ、れーちゃといっちょ!!」

 玲桜に抱き上げられた花が、わぁわぁ泣く。駄々をこねている理由が自分と離れがたいからだと知った玲桜は、感極まったのか天井を仰いでいた。

(カオスだわ)

「すぐ戻ってくるよ」
「やだぁぁ――」

 いくら育児に積極的な玲桜でも、こうなった子どもをあやすスキルはまだ持ち合わせていないのか、腕の中で泣く花におろおろしている。

「大丈夫よ、玲桜は行って。あとはなんとかするから」
「なんとかって――」

 平気だからと、泣きじゃくる花を玲桜から引き剥がす。


「いやのぉぉ――」
 しがみつこうとする手をゆっくり剥がすと、「いじわる――っ」と悪態をつきながらも百花に抱きついてきた。

「そうだね、ママ意地悪だね」

 ゆらゆらと身体を揺らして、視線だけで伶桜に「行って」と催促した。

「悲しいね」
「がなじぃのぉ……っ」
「一緒に行きたかったんだね。伶桜君のこと大好きになっちゃった?」
「ちゅき――ぃぃ」
「そっかぁ、大好きになっちゃったか。ママもはーちゃんのこと大好きだよ」

 背中を叩いて、花の気持ちを受け止め続けた。

「あぁぁ――」

 すると、徐々に花の駄々がただの泣き声に変わっていく。そこへモモがダイニングテーブルに登ってきて、花の足に顔を寄せた。
 足に触れた柔らかい感触に、花の気持ちが「悲しいこと」から逸れたのだろう。

「ぐふ、ふふっ。くちゅぐっちゃい」

 モモのナイスアシストで、見事花の機嫌が直った。

「あっちゃ、はーちゃんと遊びたいのかな?」
「いいよぉ」

 まだ涙に濡れた目には、もう悲しい色はない。真っ赤になった頬に口づけると、花は「きゃあっ」と笑ってくれた。

❖❖

 玲桜がロビーに出ると、熊谷が待機していた。
 視線で頷き、その足で駐車場に行く。車に乗ってようやく玲桜が言葉を発した。

「報告しろ」