愛してるの期限が切れる前に

 モモも百花たちがいる空間に慣れてくれたらしく、ご飯を持った花の周りを身体をすり寄せてつきまとっていた。

「あっちゃ、おいちぃ?」

 相変わらず花はモモを「あっちゃ」と呼んでいる。モモも「あっちゃ」が自分のことだと理解しているのか、花の呼びかけに短く鳴いて応えている。

「そう言えば、どうしてモモにしたの?」

 玲桜が「モモ」と呼ぶたびに、自分が呼ばれている気がしてしまうのだ。

「ももみたいだと思ったんだ」
「私?」

「そう。ももって猫みたいだなってずっと思ってたんだ。警戒心が強くて、でも一旦心許したらすごく懐いてくれるところも。あと黒毛も綺麗だろ? 一番は君がいないときでも俺が”もも”って呼びたかったからだけど」

 なんだ、その恥ずかしい理由は。

「そ、そうなんだ」

 聞くんじゃなかった、と熱くなった頬を手の甲で隠して、百花はいそいそとテーブルについた。

「今日はなにしようか?」
「仕事じゃないの?」

 伶桜が花のご飯を手伝いながら「違うよ」と言った。

「来週から少し家を空ける分、まだ休みだ。ひと気のない場所なら平気だろう?」
「うーん、そうだなぁ」

 迷っていたとき、どちらかの携帯が鳴った。
 着信音が同じなので、音を聞いただけではどちらかわからないのだが、音は一階から聞こえるのなら、玲桜の携帯だ。
 玲桜がゲストルームに携帯を取りに行った。
 その間、百花が花のご飯を手伝った。
 戻って来た玲桜の表情は、どこか険しい。

「どうしたの?」
「ごめん、仕事だ」
「れーちゃ、おでかけ? はーちゃもいく!」
「伶桜君はお仕事だよ」
「いやっ」

 すっかり伶桜の居心地のよさに離れがたくなってしまったのだろう。
 珍しく花が駄々をこねた。

「いくの――っ」

 子ども用の椅子の上で泣き出した花の声を聞いて、身支度を調えていた玲桜が飛んできた。

「はーちゃん、どうして泣くの?」