愛してるの期限が切れる前に

 香ばしい香りが、百花を眠りから呼び覚ました。

「コーヒー……?」

 ベッドの上でぐんと伸びをして、「おはよ、はーちゃん……」とベビーベッドに目をやると、そこはもぬけの殻。

「花!?」

 焦って飛び起きると、少し隙間の空いた扉から、花の元気な声が聞こえてきた。

「れーちゃ!」

 どうやら、玲桜が花の面倒を見てくれているようだ。
 簡単にベッドを直して駆け足で螺旋階段を降りると、キッチンでレオに抱っこされた花がトースターにバターロールを入れているところだった。

「ままぁ、おはよ!」

 朝日が差し込む室内に、花と玲桜の笑顔が眩しい。

「おはよ」

「おはよう、もも。ぐっすり眠れた? もっとゆっくりしてていいのに」
 玲桜と目が合った途端、昨夜の告白が思い出された。

――百花、愛してる。

 朝なのに、心拍数がはね上がった。

「お、おはよう」

 どうしよう、まっすぐ玲桜の顔が見られない。

「はーちゃんのこと、ありがとう。いつ起きたの?」

 ぜんぜん気づかなかった、と小声で言うと、玲桜がくすりと笑った。

「七時くらいかな? ママを起こさないよう、起きたあとも一人で静かにしてたんだよね」

 花も「ねー」と玲桜の顔を見て、にこにこしていた。頭が動くたびに玲桜譲りの癖毛がふわふわと揺れる。今日も見事な鳥の巣ができあがっていた。

「そっか、ありがと。はーちゃん」

 礼を言うと、花が「きゃあっ」とまた嬉しそうに笑った。

「もうすぐパンも焼けるし、朝ご飯にしよう。今朝ははーちゃんがたくさん頑張ってくれた特製ご飯んだよ」
「はーちゃ、ちんしたの! たまごもぐしゃってちた!」

 ダイニングテーブルの上にはスクランブルエッグがあった。

「本当に? すごいなぁ、ママも見てみたかった」