愛してるの期限が切れる前に

『待てって。茶化して悪かった! でもな、状況は相当マズいぞ。お前がやったことは、男としてだけじゃなく人としてもアウトだ。なんだよ、金置いてくるって。せめて理由くらい書き置きしろよ!』
『服を破ったんだ。当然その弁償代だと思うだろう』
『ぶぁぁぁっか! 世間一般じゃ、ヤった値段だって思うんだよ。お前は、彼女を金で買ったんだ』
『――』

 熊谷の力説に、玲桜は茫然自失となった。
 そんなつもりは毛頭ない。あの金は弁償代だ。
 正当な対価のはずが、歪んだ事実を生んでしまったというのか。

『どうせお前のことだから、いろいろ言葉をはしょったんだろうけど、大事なところは省くな。百花ちゃんは百パーセント誤解している。賭けてもいいわ』

 絶対だと断言され、玲桜はなにも言えなくなった。

『会って、誤解を解く』
『あぁ、そうしろ。早くしないと拗れるだけだ』
『あら、駄目よ。そう言うのって、追いかけられるほど怖くなるもん』

 意を決したところに横やりを入れてきた女がいた。大学の一期上だという女はモデルをしているらしく、やたら見た目がうるさい。

『玲桜が怖くて逃げたんでしょ? なのに、追いかけてきたらまた襲われるんじゃないかって怯えちゃうんじゃない?』

 怯える、という言葉に、内心ひやりとした。

『しばらくはそっとしておいてあげるべきじゃないかな? 時間でしか解決してくれないものってあると思うし』
『いや、でもな』
『男のあんたより、女の私の方が、その子の気持ちに寄り添えてると思わない?』

 一理ある理屈に、玲桜は唸った。

『しばらくは、どれくらいなんだ?』
『ん~、人によると思うけど、向こうが会いたいなって思うまではこっちからはなにもしないのが正解かな?』

 そんな時期が来るのだろうか。
 もう一度、百花が玲桜に会いたいと思ってくれるのはいつだろう。