愛してるの期限が切れる前に

 目に映るものすべてが忌々しいまま、おずおずと玄関の隙間から顔を覗かせた百花の態度に、なにも思わないはずがなかった。力任せに扉をこじ開け、部屋に上がりこんだ。

「な、なに? どうしたの――」

 怯える百花は、玲桜と目を合わせようとしない。
 華奢な身体が、玲桜を見て怯えている。この肩に、玲桜以外の男が手をかけた写真を思い出して、「おい」と乱暴に肩を掴んだ。
 そして、見つけてしまった。
 百花の首筋に残る赤い痕。

「――んだ、これ」

 玲桜がそこに指を這わすと、百花がびくりと身体を強ばらせた。

「あ、の――っ、これは。なんでもなくてっ」
「なにもなくて、こんなのがつくわけないだろっ。お前、若森に抱かれたのか」

 怒りを込めた低音に、百花が震えながら両手で顔を覆った。

「ちが――」
「じゃ、これはなんだよっキスマークだろっ!!」
「そ……だけど、若森さんが――」
「あいつの名前なんて、呼ぶな!!」

 怒鳴り声に、百花が「ひ……っ」と息を呑んだ。

「ごめ……ごめん、なさ」

 イライラした。
 脳みそも心臓も怒りで沸騰しかけてるのに、意識だけは冷めていて、目の前で怯える百花をどうしてやろうかと思案する。

「若森はお前をイかせてくれたのか?」

 若森ならよくて、玲桜は駄目な理由はなんだ。
 若森と自分との違いが知りたい。あいつに奪われた場所を奪い返したかった。

「なに言って――違う、そんなことしてないっ」
「ホテルまで入っておいて?」
「なん……で、そのこと」

 百花が半泣き顔で、呆然となった。
 彼女が認めた事実が憎い。
 黒い瞳から、涙が一筋頬を流れ落ちていく。震える唇をあいつが味わったのだと思うと、もうどうしようもできなかった。
 奪われたのなら、奪い返せばいい。

「玲桜――、やだっ。玲桜!」
「あいつはよくて、俺は嫌か。ひどいな」
「――っ」