愛してるの期限が切れる前に

「昔からだもんね。ちょっと困難にぶつかると別の道を探してしまうの。私が生きやすい道に行っちゃう。はは、駄目だよね。こんな姿、はーちゃんには見せられないって最近思うようになって」
「それは違う」

 恥ずかし紛れに笑って誤魔化した百花に、玲桜ははっきりと告げた。

「生きやすい道に行ったっていいよ。ぶつかって再起不能になるより逃げて生きながらえた方がいいに決まってるだろ。そうしたらやり直せるチャンスもくる。現実はゲームみたいにリスタートはできないんだ」

 百花が自分自身で攻めていた弱さを、玲桜は肯定してくれた。

「ただ、今の生き方が生きにくいと思うようになったなら、そのときは道を選び直したらしい。ももは今、変わろうとしているんじゃないか」
「でも……やっぱり怖くて。勇気なんて出せない」
「だったら、俺とやろう。また百花の世界に俺を入れて。二人で巡れば、絶対に見つかる」

 初めて玲桜が百花のゲームの世界にやって来た日の感動が蘇ってくる。

 二人でクエストをクリアしたとき、玲桜とならなんでもできるような気がした。実際に高難易度のクエストだって、何度も完遂した。
「好きだよ。もものことがずっと好きなんだ」

 玲桜からの告白に、頬が熱くなった。
 そんな百花を見て、玲桜が目を細めて笑った。
 弱々しさすら感じるのに、それが息を呑むほど綺麗で、視線が外せない。

「信じられなくてもいいよ。ももに受け入れてもらえなくても、俺が君を愛してるこの気持ちが嘘になるわけじゃないから」
「あ、愛し……って、なに言ってるの」

 恥ずかしげもなく、なんてきざな台詞を言うのだろう。なまじ顔がいいと、たいがいのことが様になってしまう。
 あたふたしながら、お茶を飲む。
 なにかしていなければ、この雰囲気に耐えられなかった。ごくごくと音を立てながら飲んだが、味なんてわかるわけがなかった。

「百花、愛してる」