愛してるの期限が切れる前に

 散々百花を傷つけてきた憶測も、蓋を開けてしまえばなんてことはなかった。

(なんだ――)

 百花が見ようとしてこなかったものとは、こんなにも呆気ないものだったのか。
 玲桜は椅子に座り直すと、頭を抱えた。

「あのあと、何度も連絡くれたのは?」
「ももに謝るためだよ。あのとき、俺は仕事で中東にいたから、電話しかできなかった」

 事実を摺り合わせてみればよかっただけなのだ。
 ただ、百花にそれをするだけの勇気がなかったせいで、四年も引きずってしまったのだ。

「あいつの言う通りだった。なんだよ、じゃあそっとしておくべきっているのは? そっちは間違いなのか?」

 ぶつぶつとぼやく声に、百花は怪訝な顔になった。

「どういうこと? あいつって誰のこと?」

 百花たちはとんでもない誤解をしているのではないだろうか。

「熊谷だよ。金を置いた俺は人としても最低だって。理由を残さなかったなら、百花は誤解するって言ったんだ。俺とももの間で、そんな誤解が生まれるわけないと思ってたから――」

 玲桜にとってはありえない誤解でも、熊谷の方が良識人だった。

「逃げ出したのは俺が怖いからで、ももがもう一度俺に会ってもいいと思えるまで、そうっとしておくべきだって言うのは?」

 縋る声に、玲桜らしさはない。

「そういう考え方もあるとは思うけれど」
「でも、こんな誤解を生んでいたなら会うべきだったんだ」

 玲桜が吐き出した後悔は、百花も感じていたものだ。

 お互いが同じ後悔をしていたなら、「会うべきだった」が正解だったのだ。

「……私も今、そう思ってる。でも、できなかったのは私が逃げたせいだから」
「俺のせいだろう。逃げ出すほど怖い思いをさせたのは俺だ。本当にごめん」

 百花に向かって深く頭を下げる玲桜の背中は、震えていた。
 玲桜も苦しんでいたのだ。
 そう思えれば、彼を警戒する気持ちも薄れていく。