「祖父にしたら、これ以上ないくらいの好条件だったんだ。水島の祖父は、鳳の名前を聞いてもまったく関心を持たなかった希有な人で、その息子も同じ気質だと。実際その通りだった。祖父から君の父親に話がいったときも、水島はなんなく俺を受け入れた。俺への同情も下心もない人間に会ったのは本当に久しぶりだった」
そんな経緯があったのか。
「でも、よく知りもしない人の家に居候する気になれたわね。私なら無理。絶対気疲れしちゃうもの」
「ももはそうかも。俺は日々の煩わしさから逃れられるならどこでもよかったんだ」
その言葉だけで、玲桜がどれほど神経を張り詰めて暮らしてきたかが窺い知れた。
「水島家の面々は、こっちの調子が狂うほど俺を特別視してこなかった。ももに至っては、近づきもしてこなかっただろ? 警戒心ばちばちな猫みたいだったよ」
「そんなに?」
人見知りをしていたのは事実だったからこそ、当時を思い出して頬が熱くなった。
「なんだか、ごめんね。今さらだけど……」
「いいよ、そんなももを観察するのも面白かったし。懐かない猫を手懐けていく感覚っていうのかな」
「だから、ごめんって。もぅ」
我慢できずにむくれると、玲桜が笑い声を上げた。
「そう、そんな顔も見せてくれるようになったときは、内心ガッツポーズもしたよ。やっと懐柔できたんだって大満足だった。大好きになってたよ」
のぞき込むように顔を傾ける玲桜からの告白に、じわじわと耳先まで熱くなった。
せっかくお風呂に入ったのに、また汗をかいてしまっている。
すると、玲桜がふいにカウンターに両肘をついて顔を覆った。大きくため息をつきながら、「――あの日の話をしてもいい?」とくぐもった声で問いかけてきた。
「本当はもっと君の気持ちを待つべきなんだろうけれど、我慢できない。どうしても今、聞きたいんだ」
「――っ」
そんな経緯があったのか。
「でも、よく知りもしない人の家に居候する気になれたわね。私なら無理。絶対気疲れしちゃうもの」
「ももはそうかも。俺は日々の煩わしさから逃れられるならどこでもよかったんだ」
その言葉だけで、玲桜がどれほど神経を張り詰めて暮らしてきたかが窺い知れた。
「水島家の面々は、こっちの調子が狂うほど俺を特別視してこなかった。ももに至っては、近づきもしてこなかっただろ? 警戒心ばちばちな猫みたいだったよ」
「そんなに?」
人見知りをしていたのは事実だったからこそ、当時を思い出して頬が熱くなった。
「なんだか、ごめんね。今さらだけど……」
「いいよ、そんなももを観察するのも面白かったし。懐かない猫を手懐けていく感覚っていうのかな」
「だから、ごめんって。もぅ」
我慢できずにむくれると、玲桜が笑い声を上げた。
「そう、そんな顔も見せてくれるようになったときは、内心ガッツポーズもしたよ。やっと懐柔できたんだって大満足だった。大好きになってたよ」
のぞき込むように顔を傾ける玲桜からの告白に、じわじわと耳先まで熱くなった。
せっかくお風呂に入ったのに、また汗をかいてしまっている。
すると、玲桜がふいにカウンターに両肘をついて顔を覆った。大きくため息をつきながら、「――あの日の話をしてもいい?」とくぐもった声で問いかけてきた。
「本当はもっと君の気持ちを待つべきなんだろうけれど、我慢できない。どうしても今、聞きたいんだ」
「――っ」
