愛してるの期限が切れる前に

 言われてみれば、林道に入る前に門扉らしきものがあった。玲桜が車から下りて操作していたから、てっきり通行券を取って門を開けたのかと思ったが、まさかの私有地。

「ままぁ、はやくぅ」
「は、はーい」

 つくづく玲桜には度肝を抜かされる。
 けれど、彼の行動には花を危険に去らせたくないという一貫した思いも感じられた。
 百花だけでは、ここまで大がかりなことはできない。
 人目につかない場所に行こうとすれば、時間も労力もかかる。自転車で行ける距離もたかがしれていた。

(離れないって言ってたけど)

 ならば、リリカとはどうするつもりなのか。
 彼女は昔、自分こそが玲桜の一番だと言っていた。

(どうして両思いになっていないの?)

 両片思いなんてロマンチックな展開になっているようには見えない。
 それとも、百花がそう思っているだけで、知らないところで二人は今も会っているのだろうか。

(もしそうだとしても、私にはどうすることもできない)

 玲桜を知った気になって優越感に浸れば、またどん底まで落とされてしまう。

(だから、また逃げるの?)

 生きやすい道を選んで行くのが、果たして花にとって最良の選択と言えるのだろうか。
 花も、百花みたいに逃げてしまうことを覚えてしまったらどうしよう。
 子どもに見せられない生き様はしたくない。
 四年前、玲桜はお金をおいていった後、何度も連絡をくれた。話がしたい、と言っていたのに、百花は頑なに彼の言葉に耳を塞いでしまったのだ。
 なにも聞きたくなかったから。
 お金で換算できる程度の価値だと言われたのか悲しかったから。
 でも、百花が勇気を出して、モデルとの関係を玲桜に尋ねることができていたなら。
 若森との誤解を解けていたら。

(違った未来があったのかもしれない)

 選ばなかった道の話をしても仕方ないのに、後悔ばかりは膨らんでしまう。