愛してるの期限が切れる前に

 花から「じぃじ」「ばぁば」と呼ばれた二人も、玲桜みたいに表情を蕩けさせていたっけ。

「体調は平気なのか?」
「うん、花を産んでからの方が昔よりたくましくなったんじゃないかな。私が寝込んじゃったら、花をお世話をする人がいなくなっちゃうもん。死活問題だよ」
「水島たちとフランスに移住しようとは思わなかったんだ」
「慣れ親しんだ場所の方が、私も安心できるし。こっちには私の主治医もいるでしょ」

 ここ数年はおろそかになっているが、花を産む前までは定期検診には行っていた。
「お父さんも初めてのお産なら、なおのこと日本にいた方がいいだろうって。私も言葉も通じない土地に行くのには抵抗があったし」
 母のように「いつかフランスに移住したい」という夢を持って、こつこつと準備をしてきたわけではない。言葉の壁も、生活スタイルも知らない。
 それに加え、百花には体調のこともある。
 やっとの思いで健康体になれたのに、土地を移ったことで身体を壊したくなかった。

「それより、これって本物?」

 百花が玲桜の腕のタトゥーを指さした。

「シールだよ。本物っぽく見えるだろ? 人よけにもなるし重宝してるよ」
「こんなのいつ使うの?」
「人に邪魔されたくないときかな? 俺はプライベートもある程度切り売りしてるから、どうしても身バレしたくないときとかに使ってるんだ」

 そう言って、玲桜が自分のクラップリプを開いて見せた。

「本当だ。結構投稿してるのね」

 仕事の合間の休憩風景や、私服姿の自撮りもある。共通しているのがどれも自撮りであるということだ。

「これも仕事のうち。知名度を上げるにはSNSも活用しないとね」
「広告塔も大変なのね」
「さっき、はーちゃんの写真たくさん撮ってただろ? あそこに俺と一緒のもある? あったら送ってくれないか?」
「あるけど、なんで?」