愛してるの期限が切れる前に

 玲桜は念のため変装をしていくこととなり、部屋から出てきた姿は一見しただけでは玲桜とはわからいくらい、凄みのある風貌になっていた。半袖の黒いTシャツに、同色のパンツ。腰にシャツを巻き、髪は鬘で黒髪に変え、目元はサングラスで隠した。首にはシルバーのチェーンネックレスを飾り、半袖から覗く腕にはタトゥーがあった。

「わ……ぁ」

 その変わりようにあんぐりと口を開ける百花の膝の上で、花が不思議そうに玲桜を見ていた。
 玲桜の雰囲気は消えているけれども――。

「本当にそれで行くの?」
「なにか問題ある?」

 別の意味ですごく目立ってしまうのではないだろうか。

(近寄りがたいって言うか、ちょっと危険な人っぽいというか)

 近づいてはいけない人であるように見せるのがうまい。


(あのタトゥーって、本物なのかな?)
 ランニングウェア姿のときも思ったが、玲桜は意外と筋肉質だ。肩幅も広いし、胸板も厚い。
 今日の花は髪をくくって、帽子の中に入れている。案外こうすることで、目の色が目立たなくなるのだと玲桜が教えてくれたのだ。

「違和感があるのは、髪と目の色が違うからなんだ。だから、どちらかを隠せばいいのだけれど、はーちゃんにはまだ無理だしね。帽子で髪を隠しちゃう」

 そう言って、玲桜が綺麗に花の髪を結ってくれた。
 確かに、これなら花も外国人に見える。顔立ちも玲桜に似て整っていることも余計に外国人の女の子風に見せていた。
 そんな花を凄みのある玲桜が抱き上げるものだから、違和感と威圧感が半端ない。こんなの誰も半径二メートルは近づきたくないと思うはずだ。

「それじゃ、行こうか」

 それでも、声と口調は玲桜のままだというギャップが少しおかしかった。
 初めての水族館に、花はなにを見ても目を輝かせていた。