百花が日本に残ったのは、大学だけが理由ではない。
玲桜との交流を断ち切りたくなかったからだ。
大学を卒業した玲桜とは、以前ほど親密な交流をしているわけではなかったが、ゲームをしていれば、玲桜がふらりと百花のワールドに入ってきていた。
そこでとりとめのない話をして、また互いに現実の世界に戻っていく。
大学のこと、一人暮らしのこと。
誰も知らない二人だけの世界だからこそ、気兼ねなく話せるのが嬉しくて、誰も知らない玲桜を百花だけが知っている事実は、ほんの少しだけみんなよりも玲桜の近くにいるような気持ちにさせてくれた。
声だけでしか玲桜を感じられないが、モルフォ蝶色の瞳を知っているのは百花だけなのだ。
一度だけ、百花の部屋に遊びに来てくれたこともあった。
二人で夕飯を作って食べ、二十一時過ぎには帰ってしまったけれど、玲桜は変わらず玲桜だった。
だからこそ、玲桜に幻滅されたくなかった。
百花がここで二度とかかわらないと約束すれば、少なくとも玲桜の中での百花は綺麗なままでいられる。
でも、玲桜なら絶対に百花の話を信じてくれる。
そう思ったからこそ、リリカの要求を突っぱねた。
「できません」
その直後、顔にアイスコーヒーがかかった。
「私のほうが、彼の役に立てるの。あんただって、玲桜がどれほど価値のある人なのか、知ってているんでしょ!? たいした顔でもないのにみっともないのよ」
(――信じるってなに?)
流しっぱなしの水音に、百花は嫌な記憶から現実に引き戻された。
実際の玲桜は、百花の話に耳を傾けてもくれなかった。お金で解決しようとした。
百花は自分の知っている玲桜の一部分だけを見て、安心していたにすぎない。
ほうっと息をつき、洗ったタオルを絞った。
(結婚か)
リリカに知られれば、今度はアイスコーヒーくらいじゃすまないかもしれない。
玲桜との交流を断ち切りたくなかったからだ。
大学を卒業した玲桜とは、以前ほど親密な交流をしているわけではなかったが、ゲームをしていれば、玲桜がふらりと百花のワールドに入ってきていた。
そこでとりとめのない話をして、また互いに現実の世界に戻っていく。
大学のこと、一人暮らしのこと。
誰も知らない二人だけの世界だからこそ、気兼ねなく話せるのが嬉しくて、誰も知らない玲桜を百花だけが知っている事実は、ほんの少しだけみんなよりも玲桜の近くにいるような気持ちにさせてくれた。
声だけでしか玲桜を感じられないが、モルフォ蝶色の瞳を知っているのは百花だけなのだ。
一度だけ、百花の部屋に遊びに来てくれたこともあった。
二人で夕飯を作って食べ、二十一時過ぎには帰ってしまったけれど、玲桜は変わらず玲桜だった。
だからこそ、玲桜に幻滅されたくなかった。
百花がここで二度とかかわらないと約束すれば、少なくとも玲桜の中での百花は綺麗なままでいられる。
でも、玲桜なら絶対に百花の話を信じてくれる。
そう思ったからこそ、リリカの要求を突っぱねた。
「できません」
その直後、顔にアイスコーヒーがかかった。
「私のほうが、彼の役に立てるの。あんただって、玲桜がどれほど価値のある人なのか、知ってているんでしょ!? たいした顔でもないのにみっともないのよ」
(――信じるってなに?)
流しっぱなしの水音に、百花は嫌な記憶から現実に引き戻された。
実際の玲桜は、百花の話に耳を傾けてもくれなかった。お金で解決しようとした。
百花は自分の知っている玲桜の一部分だけを見て、安心していたにすぎない。
ほうっと息をつき、洗ったタオルを絞った。
(結婚か)
リリカに知られれば、今度はアイスコーヒーくらいじゃすまないかもしれない。
