愛してるの期限が切れる前に

『玲桜の側にあんたみたいな地味な子がいると、彼の価値が落ちるの。幼馴染み気取って優越感に浸ってんじゃないわよ』

 思い出したリリカの言葉に、ハッと我に返った。
 洗面所の鏡に映るのは、二十三歳の百花だ。
 もう四年も前の話なのに、今も鮮明にあの日言われた言葉を思い出すのは、百花にとってトラウマ級の出来事だったからだ。
 ある日突然、大学で百花を待ち伏せしていたリリカは、雑誌の専属モデルで、よく彼の隣を歩いていた綺麗な女の人だった。
 当時、大学の授業で一緒になった子が「リリカ、可愛い!」とはしゃいでいたのを覚えている。
 ファストフード店に連れて来られるなり、リリカは自分のことを、玲桜の一番だと言った。

「玲桜ってたくさん女の子を侍らせてるの。みぃんな割り切った関係だから、私は大目に見てあげてるんだ。わかるかな? 身体だけの関係って。玲桜みたいに格好よくて、お金持ちと寝るって、ステータスあるでしょ? 欲しいものも買ってくれるし、最高だと思うよ。まぁ、あんたみたいなガキにはわかんないだろうけど」

 得意気に話すリリカの後ろの方からは、カウンターで注文を聞く店員の声がする。母親に連れられた小さな子は、プラスチックケースに飾られた玩具に釘付けになっていた。
 百花たちの前には、アイスコーヒーとオレンジジュースだけ。
 百花はリリカから万引き犯に間違われたときの写真を見せられ、玲桜や両親に知られたくなければ、玲桜とかかわるなと言われたのだ。
 両親は、百花が大学生になったのを待って、母の夢だったフランス移住へ踏み切った。百花は大学を理由にひとり日本に残り、両親が用意してくれたアパートで一人暮らしを始めた。
 初めての一人暮らしをに浮き足だっていたのだと思う。