愛してるの期限が切れる前に

 高校の進学先に、通信高校を選んだのは、自宅で授業を受けられる利点があったからだ。
 健康になりつつあるとはいえ、やはり万全とは言えず、休む日もある。そうすると、クラスメイトと壁ができてしまった。嫌がらせやいじめを受けたわけではないが、居心地はよくなかった。ならば、高校は登校しなくてもいい学校に進学したかった。
 自分で登校日を決め、自分のペースで課題をこなしてくスタイルは、百花にあっていて、高校生活は快適だった。登校すると、友達とまではいかないが、クラスメイトと話すこともあった。
 その頃には、玲桜は大学生になっていて、水島の家を出て一人暮らしをするようになっていたが、水島の家にくるとは、百花とゲームをしたり勉強を教えてくれたりした。
 彼が出ていく日、百花は初めて彼の前で泣いた。

「いつでも会えるよ」

 そんな百花の頭を撫でながら、彼はそう言ってくれたのを律儀に守ってくれているのだ。
 彼が友人らしき人たちに囲まれて歩いている様子も見かけるようになったが、百花は一貫して他人の振りをし続けた。
 玲桜の周りに集まる人たちは、彼と同じ綺麗で華やかで、目立っていた。

(すごいなぁ、陽キャの一軍組だわ)

 一人でいることを好む百花とは、真逆の人たちは、いつも生き生きした表情で、楽しそうに笑っていた。
 ガチャガチャショップで推しを出そうと奮闘していた百花は、偶然、集団で店の前を通り過ぎていく玲桜と一瞬目が合った。
 玲桜がモルフォ蝶なら、百花はなんだろう。
 日の光の下にいる玲桜と、店内にいる自分の立ち位置は、主役を見に来た観客ほど違っている気がした。
 それでも、外では相変わらずカラーコンタクトを着けているのを見ると、百花だけが知っている秘密みたいで、少しは優越感に浸れた。
 そんな関係が変わったのは、大学生になりたての百花が、万引き犯に間違えられたことだった。