愛してるの期限が切れる前に

「あっ、ごめんっ。なんでもないっ!」

 忘れて、と両手を振って、真っ赤になっているだろう顔を伏せた。

「ももは、俺の目が怖くないのか?」
「ないっ、あるわけない! めちゃめちゃ綺麗だよ! 眼福です。ありがとうっ。神様は天才かなっ!?」

 自分でもなにを言っているのだろうと思ったけれど、この美貌でこの目の色なんて、神様はいい仕事をしてくれた。

(この見た目で青い目なんて、完成されてる)

 二次元キャラクターが具現化したとしか思えない容姿に、百花は心の中で拝み倒したいくらい感激してきた。

「あのっ、その! 本当にね、綺麗だから! すごく素敵だと思うよっ。似合ってる! めちゃめちゃいいと思う!」

 どれも月並みだが、それ以外に賞賛する言葉が浮かんでこない。

(あぁ、もっと気の利いたことが言えたら――っ)

 玲桜は、今「気持ち悪いだろう?」と聞いたのは、誰かにそう言われたことがあるからだ。そして、彼はその言葉に傷ついた。
 だから、カラーコンタクトをして目の色を黒くしているのだろう。重たい前髪も同じ理由に違いない。
 けれど、世の中はそんな人ばかりじゃない。
 慰めにもならないかもしれないが、百花みたいに素敵だと感じる人もいることを知ってほしかった。

「わ、私の推しにも似てるしね!!」

 挙げ句の果てに、なんて失礼な励まし方だ。
 百花の推しに似ていると言われて玲桜が喜ぶわけがないのに、他に励ます言葉が見つからなかったのだ。
 すると、玲桜はどれが面白かったのか、突然吹き出した。

「ははっ、そうだよね。言われると似てる。なんだってモルフォ蝶色の瞳だっけ?」
「う、うん」

 傷つけたかと思ったが、笑ってくれていることにほっとした。
 ぎこちなく頷くと、「そうか、推しか」と玲桜が小さく呟いた。

「俺は女の子じゃないけど、いいの?」