愛してるの期限が切れる前に

 首を傾げれば、玲桜がまじまじと百花を見てから苦笑した。

「まぁいいか。このキャラ、強いらしいね。ほら、君のワールドに入るよ。フレンド申請するからID教えて」
「うん!」

 大好きなゲームで、初めてのフレンド。
 ドキドキして画面を見つめていると、すぐにフレンド申請の文字が表示された。

「わ……ぁ」

 承認すれば、玲桜が百花のワールドに入ってきた。

「それで、どのクエストしたいの?」
「えっとね、これ」
「へぇ、いいね。受けてよ」

 玲桜が使うキャラクターの強さと、彼のサポートの手厚さに、百花は楽々クエストを遂行できた。その日、ずっと開いたままだった「フレンドとの協力プレイで二百四十秒以内にクリアする」が埋まった。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 これで、またガチャが一回引ける。

「玲桜でいい。俺も百花って呼ぶよ」
「わかった、玲桜君だね」
「君もやめて」
「じゃ、玲桜」

 百花の中で同居人がフレンドになった。
 それからも、百花は時間が合えば一緒にゲームで遊んだ。玲桜と百花、二人しかいない世界は広く、どもこかしも美しかった。

「もも、あの花の名前はなに?」

 六月のある日、ゲームをしながら玲桜が窓の外を見て言った。
 玲桜が見ていたのは、大人の手のひらほどの白い花を咲かせている庭木だ。

「タイサンボク。お花おっきくてびっくりするよね」
「匂いもすごいね。あ、今なにか目に入った」
「え、大丈夫?」

 そう言って隣を見ると、玲桜が眼球に指をあてがっていた。球体の薄い膜が外れ、黒かった瞳の奥から、蒼色の瞳が現れた。

(蒼だ)

 澄んだ蒼の美しさに、百花は息をするのも忘れた。
 呆然とする百花に、玲桜が眉を下げながら弱々しく笑った。

「――気持ち悪いだろ? すぐ戻す……」
「尊い」
「は?」

 玲桜の面食らった表情に、百花は思っていたことが声に出ていた事実に慌てた。