愛してるの期限が切れる前に

「聞いて。はーちゃんとママは、しばらくママのお友達の玲桜ちゃんのおうちで暮らすことになったの。ときどき、水島のじいじたちがお泊まりに来るでしょ? 今日は私たちが玲桜ちゃんのおうちにお泊まりするの」
 まだ事実を話しても、花には半分も理解できないだろう。やみくもに不安を与えるよりは、伏せておいた方がいい事実もある。
「おちょまり?」
 花は小さな手をぷくぷくの頬に当てて、こてんと首を傾げた。
「そうだよ。お泊まり。どうかな?」
「いいよー」
 納得してくれたことにほっとすると、玲桜もしゃがみ込んで「ありがとう」と言っていた。
「いっぱい遊ぼうね」
「いいよー!」
 花と接する玲桜は、常に優しい顔をしている。
 自称ストーカーではあるが、花の父親でもある。
(玲桜はどう感じているのかな?)
 花にはとっさに友達だと紹介したが、父親だと名乗り出たいと思っているのだろうか。
(結婚か)
 承諾したはいいが、玲桜の申し出は花に対する義務感からなのは、ちゃんと理解している。
 玲桜は、結婚という契約に期限は切らなかったが、花の安全が確保されたら当然終わりになるだろう。
 百花は、花を抱っこしたまま冷蔵庫から牛乳を取り出す玲桜の様子をぼんやりと眺めていた。
 こんなふうに再会するとは、夢にも思わなかった。
 並ぶと、しみじみ二人が血の繋がった親子なのだと感じる。
(本当、そっくりね)
 産んだときから、美人になると言われていたが、玲桜の幼少期とそっくりなら、将来美人になんるのは確定だ。
 子どもの頃の玲桜は、どんなふうだったのだろう。
 花みたいに、たくさん笑っていたのだろうか。