愛してるの期限が切れる前に

 今思えば、玲桜の生活の中に、冷凍食品を食べるという習慣はなかったのだろう。御曹司がどういう生活をしているかは知らないけれど、きっと毎食栄養バランスを考えて食事を作ってくれる専属のシェフがいたに違いない。
「ももたちの荷物は改めて取りにいくとして、はーちゃんに使うもので銘柄が決まっているなら教えて。ストックがあるのにこしたことはないだろ」
「オムツとかのこと? 特にこだわりはないかな」
 オムツは特売日に出やすい銘柄だし、お尻拭きに至っては消耗品と割り切って安い物を使っている。
「アレルギーや肌質は?」
「それも大丈夫。えっと買い物リストに書いてあって」
 そう言いながら、百花は鞄から百均で買ったメモ帳を取り出した。
「見せてもらっていい?」
「えぇ、どうぞ」
「へぇ、しっかり書いてある。ももらしいな。自学ノートを思い出す」
 玲桜がメモ帳の文字を見て、嬉しそうに目を細めた。
 百花の自学ノートは呪文か呪いだと言われたくらい、隙間なく文字を書いていたからだ。
「そ、そんなことないよ。バタバタしているとうっかり買い忘れたりするから、二度手間にならないよう思いついたときに書いてるだけ」
「ありがとう。参考になった」
 玲桜はさっそく携帯を触って、画面を操作していた。
 マンションに着いたとき、玲桜は運転手から画面の割れたのと同じ機種の新しい携帯を渡されていた。
「疲れただろ。荷物を取りにいくにしろ、一旦ソファに座って。甘い物――は、ごめん。なかった」