愛してるの期限が切れる前に

「絶対にさせない」
 玲桜の声には、確固たる意志が感じられた。
 百花のことはなんとも思ってなくても、自分の血を引く花は気になるのだ。
 そんな玲桜を「優しい人」と呼ぶのは、少し違う気がする。
 けれど――。
「……わかった、結婚するわ」
 幸せな結婚なんてしなくていい。百花は、ただ花を守りたかった。

 車は、普段百花たちが自転車で行かない方角へと走っていく。
「どこに行くの?」
「俺が今、住んでいる場所。当面はそこで暮らそう」
 そう言ってくるまで車で連れてこられた場所は、この間テレビでニュースになっていた駅前にできた新築マンションだった。産業開発事業の一環として新たに建てられた分譲マンションは、駅との利便性はもちろん、近くにはデパートに書店、飲食街と充実している。
「玲桜って、ここに住んでるの?」
「そうだよ、丁度いい物件があってよかった」
「でも、ここってこの間完成したばかりでしょ? それまでは別の所にいたってこと?」
「二ヶ月くらいはホテル住まいだったかな」
「へぇ……」
 お金持ちがストーカーになると、ホテル住まいもするのか。
 中に入ると、ホテルと見紛うほど豪奢な内装だった。
 フロントにはスーツ姿のコンシェルジュが控えていて、玲桜に気づくと「お帰り成さしませ」と綺麗な一礼をした。
「今後、彼女たちも覚えて。俺と一緒に暮らすことになった二人だ」
「かしこまりました」
 百花は、起きた花を抱いたまま、コンシェルジュの男に会釈して通り過ぎた。
 エレベーターは三台あり、百花たちが乗ったエレベーターには、ボタンが一つしかない。
「はーちゃがおす!」