愛してるの期限が切れる前に

 親しげな口調で話す相手のことを、玲桜は「俺の祖父だ」と言った。
「当然、鳳家にもはーちゃんの情報は入っているだろう。彼らは真相を確かめるべく動くよ」
「それって――」
「俺は鳳グループの次の総会で、総帥になることが内定している。そのことを快く思わない者にとって、はーちゃんは俺に辞退を促す最高の材料になるだろう」
「最高の材料……? 花を人質にするってこと!?」
 声を荒げる百花に、玲桜は静かに頷いた。
「これまでは、たまたま総帥が鳳家の一族から続けて出ていただけで、本来はグループ内で最も優れた者がトップに就く。下剋上だ」
「それが、なに? そんなの花には関係ないっ」
「この目を見て、どれだけの人間が無関係だと思う? 現にこれだけの人が投稿に賛同しているよ」
「だからって――っ、あなたが否定すればいいだけの話じゃない」
 掴まれた手を振り払おうとするも、彼の手は緩まなかった。
「俺の子なのに? 否定する理由はないだろ」
「そんな――」
 突然突きつけられた無情な宣言に、百花は唖然となった。
 今朝までいつも通りの朝だったのに、たった数時間で幸せな時間が音を立てて崩れていく。
 視線を下げて、自分の膝を見つめた。
 必死になにか考えようとしているのに、なにも浮かんでこない。
 ただ漠然とした不安と恐怖が百花に覆い被さってくる。
「もも。君はははーちゃんと離れたくないんだよね」
 問いかけられ、百花は俯いたまま頷いた。
「俺も同意見だよ。この子には母親が必要で、なにより君のことを愛している。そんな二人を離れ離れにするのは賢明な判断じゃない」
「だったら!」