愛してるの期限が切れる前に

 しかし、母が「百花から玲桜に話しかけれたなら」という条件を出したのだ。
 転倒事故という不慮の偶然が起こらなければ、玲桜は今も遠くから百花たちを見守り続けていたのだろう。
 熊谷に聞かせた結婚宣言は、彼を通して両親への接触許可が出たという報告でもあったのだ。
 だからと言って、いきなり結婚を迫るのはどうかと思う。
 相変わらず大事な部分を省く癖は、どうにかしなければ。
 百花たちは挙式を挙げるに当たり、婚約指輪と結婚指輪を購入した。目が飛び出そうな価格に血の気が引いたのは百花だけで、玲桜は「ももの価値は物体では表現できないから」とわけのわからない持論を披露していた。
 鳳グループの総裁となった玲桜の立場もあり、日本でも披露宴を予定している。
 挙式は、六月。
 タンサイボクの咲く時期を選んだのは、あの花をブーケに使いたかったからだ。
 参列者は身内だけということもあり、ごく少数での挙式になる予定だが、玲桜の方からは祖父と秘書で友人の熊谷、そして母親のみの出席となった。
 玲桜の父駿は、その後鳳グループを退社して行方知らずとなった。
 玲桜にとっても確執のある人だ。深くは知らなくていいのだろう。
 そうして迎えた結婚式、長いレースを纏った百花が父と共にバージンロードを歩いた。
 神前の前で待つ玲桜は、神の申し子かと思うほど美しかった。まさにスチル画に最適なシチュエーションに、百花は何百枚と心のシャッターを押した。
 リングガールは、可愛く着飾った花が務め、両家の母たちを悶えさせていた。

「愛することを誓います」

 神の前で永遠の愛を違う。
 それは四年前の自分は想像もしていなかった未来だった。
 たくさん逃げて、間違ってきたけれど、また玲桜に辿り付けた幸運を今度こそ大事にしよう。
 これから、もっとたくさんの幸せを三人で作っていきたい。
 玲桜に抱きかかえられながら教会の扉を抜けると、純白の鳩が飛び去っていく。
 見上げた空は、快晴だった。