愛してるの期限が切れる前に

「なに撮ってるのっ!? 肖像権の侵害よっ、訴えてやるから! ねぇ、レオ。私たち四年も恋人だったのよ!? なのに、なんで――」

 うるさく吠えるリリカを、玲桜は緩慢な仕草で一度だけ振り返った。

「お前、リリカは芸名だったんだな」
「――え?」

 それだけ言うと、玲桜は出口へ歩いていく。

「おつかれさん。玲桜さんは君の本名すら知らなかったみたいだ」

 なりゆきを静観していた熊谷が、リリカの肩に手を置いた。

「嘘よっ、だって私たち大学から一緒にいるのよ!? 名前なんていくらでも呼んで……」

 眉をつり上げたリリカの声は徐々に力を失っていく。
 そんな彼女に熊谷が問いかけた。

「玲桜さんが君を名前で呼んだこと、あった?」
「”操はその子に立てるなら、それまでは私が玲桜を守ってあげる。仮初めの恋人がいれば、周りもうるさくしないでしょ? ほら、私って可愛いし。いい女よけになれるよ”だったかな。だいぶ小賢しい手を使っちゃったね。でも、残炎だったなぁ。どうあがいても君の負け戦は確定だったんだ。おつかれさん」
「そんな……」

 軽やかな口調でリリカをいなした熊谷が、玲桜の乗る車へと足早に向かっていく。
 走り去っていく車を追いかけることすらできないまま、リリカはその場にへたりこむしかなかった。

❖❖

 百花と玲桜の結婚式は両親のいるフランスで挙げることに決めた。
 百花から玲桜が自分の父親だと聞かされた花は、最初こそ恥ずかしそうにしていたが、玲桜の「パパだよ」の言葉に、嬉しそうに彼の腕に飛び込んでいった。
 両親……おもに父は、花ができた経緯を知っているだけで、結婚したことに反対されるだろうと覚悟はしていたが、玲桜は四年間、なんども両親のもとに通い、百花たちと交流する会う許可を願い出ていたのだとか。
 父は当初頑として頷かなかった。