愛してるの期限が切れる前に

 そんな百花たちの前で、玲桜はただただ茫然自失と立ち尽くしていた。だが、モルフォ蝶色の目の縁は赤らんでいて、片手で口元を覆っていた。

「……ありがと」

 涙ぐむ玲桜の声が掠れていた。
 まさか泣くほど喜んでくれるなんて想定外だ。

「今からまた東京に戻るんでしょ?」
「いや、調整するよ。もう戻らない」
「いいの?」

 問いかけると、「こういうときのための秘書だよ」と携帯を取り出した。そうして電話をかけるためにゲストルームに入っていた玲桜が戻ってきたときは、晴れ晴れとした表情だった。

「俺も一緒に作っていい?」

 本当はサプライズで見せたかったが、みんなで一緒に作るのも絶対に楽しい。

「ぜひ」

 それから、三人で玲桜の誕生日ケーキを作った。花が卵を交ぜたり、薄力粉を奮うたびにキッチンが大変なことになったが、誰も文句は言わなかった。かなりダレた生クリームを塗り、冷蔵庫にあるフルーツを載せる。
 なんだか昔見たアニメ映画のキャラクターを放風とさせる見た目だが、玲桜は何枚もケーキを写真に収めていた。
 作っている様子を百花は写真に収めた。玲桜の楽しそうな笑顔も取った。
 ケーキを冷蔵庫にしまったあとは、玲桜が花の相手をしているうちに百花が夕飯を作った。
 水島家では、お祝い事があると必ず夕飯はすき焼きだった。
 あっちゃにも、カリカリ以外にパウチに入ったスペシャルメニューを出した。
 そのときだけは、甘えたように百花の足にすり寄ってくる現金さに呆れつつ、憎めないのが猫の小ずるさだ。

(可愛いんだから)

「ままぁ、みてー」

 花が持ってきたのは、色紙の短冊だ。

「ちゃんじゃく――」

 赤色の短冊にはミミズが這ったような文字が書いてある。その横にペン字のお手本みたいな字で「あっちゃになれますように」と書かれてあった。

「今日は七夕でもあるだろ」