愛してるの期限が切れる前に

 玲桜はずっと百花の周りで舞っていた。手を伸ばせば、指の上に留まってくれたのだ。
 もっと、その綺麗な翅を近くで見たい。
 誰よりも側で、玲桜を感じたかった。

 ――愛してる。

「もも、愛してる」

 玲桜が、その場に片膝をついた。騎士が忠誠を誓うように百花の手を取り、真摯な眼差しで見つめてくる。

「百花と花、二人とも愛しているよ。どうか二人の側にいることを許して。俺の全部をかけて君たちを守ると誓う」

 そう言うと、伶桜が百花の手の甲に口づけた。
 もう間違えたくない。

「――あなたの側にいたい」
「もも?」
「ありがとう、玲桜。ずっと待っててくれてありがとう」

 だが、玲桜にはそれだけでも十分だったのだろう。
 微笑んだ玲桜の目は、少しだけ潤んでいた。


 そのままゲストルームに運ばれた百花だったが、子どもがいればそう予定通りには進まない。

「れーちゃのけーき!」

 二階から聞こえた声に、玲桜は百花に覆い被さったまま目を丸くした。

「俺の? えっ?」

 慌てふためきながら、花が一人で起き出す前に玲桜がダッシュで主寝室へ走って行った。彼に抱かれて戻って来た花は、寝起きでも元気いっぱいだった。

「ちゃんじょーびね! おめめとっ」
「あ……っ」

 花からお祝いの言葉をもらって、伶桜は今日がなんの日か思い出した。

「けーき、ちゅくるの!」
「……本当に?」

 ネタバレに、百花が苦笑した。
 花が寝ている間にスポンジだけでも焼いておこうと、キッチンに置いたままのベーキングパウダーを玲桜に見せた。

「これをね、買いに行ってたの。うちにいたときは、毎年祝ってたでしょ? お母さんみたいにふわふわのスポンジにはならないかもしれないけれど、一応私も焼けるし。誕生日にはケーキでお祝いしないと」

 ね、と花に同意を求めれば、「ね――っ!」と盛大に答えてくれた。