愛してるの期限が切れる前に

「私の父は、目的のためなら手段を選ばない。もし男児だったなら祖父も心動いただろうが、女児には用がないと考えている人だ。息子の足枷になる存在は認めないよ」
「ままぁ、おかし」
「君たちも誰かに命を狙われて暮らすより、この金を受け取って平穏に暮らしていく方がずっと幸せなはずだよ。私は妻を守れなかった。だから、せめてあれには鳳家の犠牲になってほしくないと思っていたんだ」

 切々と子ども思いの父親を訴えてくるが、その割には呆れるほど花に無関心だった。

「それは、わざと玲桜さんんの邪魔をしていたということですか?」

 お菓子をねだる花を揺すってあやしながら、百花は視線を鳳に向けた。
 鳳は作ったようなきまり悪い顔をして、苦笑した。

「恥ずかしい話だが、私にできることはこの程度だからね。けれど、親の心子知らずとはよく言ったもので、これまでまったく関心がない振りをし続けていたのに、突然祖父の敷いたレールに乗ってしまった。経営不振な部門を子会社化し業績を回復させることで、鳳グループの収益も向上させた。私が十年かけてもできなかったことを、あれはたった四年間でやってのけた。君たちのせいだよ」

 そこでようやく鳳は、百花に責任の所在を追及し出した。

「私は……」
「関係ない? いいや、ある。あれに野心を植えつけただろう」


 俺の本気を見てて。
 二度とももと花だけは手放さない。そのためならなんでもやるよ。


 あれが、玲桜の野心だというのか。
 聡明すぎたからこそ何事にも無関心で無気力だった玲桜が、初めて本気になったものが百花たちだと言うなら、それと総帥になることとどう関係しているというのだろう。