小明が、ぽつりと言った。
「怎么办……我都有点感动了」
(どうしよう……ちょっと感動しちゃった)
わかる。
俺も結構来てる。
たった一度、一緒に仕事をしただけで、俺たちが大事にしていることを、そこまで見てくれていた。
すごいな、この人。
奈緒は少し照れたように笑った。
「……不过,我刚才是不是有点太自以为是了?」
(……でも、わかったようなことを言い過ぎましたよね?)
「如果完全不是这样的话,对不起」
(全然違っていたら、ごめんなさい)
俺は笑った。
「没有。完全没说错」
(いや。何も間違ってないよ)
「你能看到这些,我真的很意外」
(そこまで見てくれてたことに、本当に驚いた)
ふと浮かんだ言葉を、そのまま口にした。
「你很厉害」
(君はすごいね)
奈緒がすぐ両手を振った。
「没有没有」
(そんなことないです)
あれだけ熱く話していた人が、褒められると急にこうなる。
笑えてくる。
それに、さっきから気になっていたこと。
「奈绪」
(奈緒)
あ、名前で呼んだな、俺。
奈緒が一瞬、目を丸くする。
「我刚才就在想,不用再叫我‘吴先生’了」
(ちょっと思ったんだけど、「呉さん」じゃなくていいよ)
奈緒が首を傾げる。
「今天又不是工作。你每次叫我‘吴先生’,我都觉得好像还在开会」
(今日はプライベートな場だし。「呉さん」って呼ばれるたびに、まだ会議してる気分になる)
小明が吹き出した。
「真的。我也受不了了」
(ほんと。それ私も思ってた)
「本来是我们两个女生的聚会,结果一直‘吴先生’、‘吴先生’的,我都要进入工作模式了」
(もともと私たち2人の女子会だったのに、ずっと「呉さん、呉さん」って。私まで仕事モードになりそう)
ほんと、根に持つな。
奈緒もくすっと笑った。
「好」
(わかりました)
それから俺を見る。
「那……我应该怎么叫您?」
(じゃあ……なんてお呼びすればいいですか?)
まだ「您」なんだな。
丁寧な「あなた」じゃなくて、普通の「你」でいいのに。
まあ、いいか。まずは名前から。
「Dean或者凯,都行」
(Deanでも凱でも、どっちでもいいよ)
「哪个顺口就叫哪个」
(呼びやすい方で)
奈緒が何度か瞬きをした。
まただ。
考えている。
君の癖かな、これ。
少しして、奈緒が俺を見る。まっすぐに。
「那……」
(じゃあ……)
「您觉得哪一个更像是在叫您自己?」
(どちらが、本当に自分を呼ばれた感じがしますか?)
一瞬、言葉が出なかった。
中国では「凱」。
海外では「Dean」。
どちらもずっと使ってきた名前だ。
だから、いつも呼びやすい方でいいと言ってきた。
でも、どちらが俺自身を呼ばれた気がするかなんて、聞かれたことはなかった。
奈緒は、黙って待っている。
まただ。
この人は、こういうことを聞く。
少し考えて。
いや、考えるまでもなく、答えはわりとすぐに出た
「……凯吧」
(……凱かな)
「叫我凯的时候,我更觉得是在叫我自己」
(凱って呼ばれると、一番俺自身を呼んでくれてる気がする)
胸の奥が、少し熱い。
奈緒がゆっくり笑った。
「好」
(わかりました)
そして。
「凯」
(凱)
ただ、名前を呼ばれただけだ。
なのに、さっきまでとは少し違って聞こえた。
目の前の奈緒は、柔らかく笑っている。
きれいだ。
ふいに、そう思った。
「怎么办……我都有点感动了」
(どうしよう……ちょっと感動しちゃった)
わかる。
俺も結構来てる。
たった一度、一緒に仕事をしただけで、俺たちが大事にしていることを、そこまで見てくれていた。
すごいな、この人。
奈緒は少し照れたように笑った。
「……不过,我刚才是不是有点太自以为是了?」
(……でも、わかったようなことを言い過ぎましたよね?)
「如果完全不是这样的话,对不起」
(全然違っていたら、ごめんなさい)
俺は笑った。
「没有。完全没说错」
(いや。何も間違ってないよ)
「你能看到这些,我真的很意外」
(そこまで見てくれてたことに、本当に驚いた)
ふと浮かんだ言葉を、そのまま口にした。
「你很厉害」
(君はすごいね)
奈緒がすぐ両手を振った。
「没有没有」
(そんなことないです)
あれだけ熱く話していた人が、褒められると急にこうなる。
笑えてくる。
それに、さっきから気になっていたこと。
「奈绪」
(奈緒)
あ、名前で呼んだな、俺。
奈緒が一瞬、目を丸くする。
「我刚才就在想,不用再叫我‘吴先生’了」
(ちょっと思ったんだけど、「呉さん」じゃなくていいよ)
奈緒が首を傾げる。
「今天又不是工作。你每次叫我‘吴先生’,我都觉得好像还在开会」
(今日はプライベートな場だし。「呉さん」って呼ばれるたびに、まだ会議してる気分になる)
小明が吹き出した。
「真的。我也受不了了」
(ほんと。それ私も思ってた)
「本来是我们两个女生的聚会,结果一直‘吴先生’、‘吴先生’的,我都要进入工作模式了」
(もともと私たち2人の女子会だったのに、ずっと「呉さん、呉さん」って。私まで仕事モードになりそう)
ほんと、根に持つな。
奈緒もくすっと笑った。
「好」
(わかりました)
それから俺を見る。
「那……我应该怎么叫您?」
(じゃあ……なんてお呼びすればいいですか?)
まだ「您」なんだな。
丁寧な「あなた」じゃなくて、普通の「你」でいいのに。
まあ、いいか。まずは名前から。
「Dean或者凯,都行」
(Deanでも凱でも、どっちでもいいよ)
「哪个顺口就叫哪个」
(呼びやすい方で)
奈緒が何度か瞬きをした。
まただ。
考えている。
君の癖かな、これ。
少しして、奈緒が俺を見る。まっすぐに。
「那……」
(じゃあ……)
「您觉得哪一个更像是在叫您自己?」
(どちらが、本当に自分を呼ばれた感じがしますか?)
一瞬、言葉が出なかった。
中国では「凱」。
海外では「Dean」。
どちらもずっと使ってきた名前だ。
だから、いつも呼びやすい方でいいと言ってきた。
でも、どちらが俺自身を呼ばれた気がするかなんて、聞かれたことはなかった。
奈緒は、黙って待っている。
まただ。
この人は、こういうことを聞く。
少し考えて。
いや、考えるまでもなく、答えはわりとすぐに出た
「……凯吧」
(……凱かな)
「叫我凯的时候,我更觉得是在叫我自己」
(凱って呼ばれると、一番俺自身を呼んでくれてる気がする)
胸の奥が、少し熱い。
奈緒がゆっくり笑った。
「好」
(わかりました)
そして。
「凯」
(凱)
ただ、名前を呼ばれただけだ。
なのに、さっきまでとは少し違って聞こえた。
目の前の奈緒は、柔らかく笑っている。
きれいだ。
ふいに、そう思った。
