好きになる前に、恋人になった――いつか、君につながる

料理が運ばれてきた。
餃子を頬張りながら、奈緒を見る。

そうだ。
今日ここに来た理由を、まだ果たしていない。
まあ、一応。

「对了」
(そうだ)

奈緒が俺を見る。

「前几天,真的谢谢你」
(あらためて、こないだはありがとう)

「粉丝见面会从企划到现场,都做得很好。我自己也玩得很开心」
(ファンミーティング、企画から当日まで本当によかった。俺自身もすごく楽しめたんだ)

奈緒の顔がぱっと明るくなる。
小明もうなずいた。

「我之前就跟奈绪说过了。跟她合作真的很轻松」
(私も前から奈緒に言ってるの。本当に仕事がしやすいって)

奈緒が少し照れたように笑う。

「那是因为你们也非常配合。之前发的那些问题,你们都回答得很认真」
(それは、みなさんがすごく協力してくれたから。事前の質問にも、丁寧に答えてもらえましたし)

奈緒が俺を見る。

「也多亏提前知道了吴先生自己的想法,我们才能准备得这么顺利」
(呉さん自身の考えも事前に伺えたおかげで、こちらもスムーズに準備できたんです)

呉さん、か。
仕事のときと同じ呼び方。
なんとなく、引っかかる。

「上次开会的时候,你问了我的想法,对吧?」
(この前の会議で、俺の意見を聞いてくれたよね?)

奈緒がうなずく。

「那时候我挺意外的。不过,我很高兴」
(あのときは驚いたよ。でも、嬉しかった)

「因为你是真心想知道我怎么想」
(本気で俺がどう思っているのか、聞こうとしてくれたから)

奈緒が柔らかく笑う。

「因为那是吴先生的粉丝见面会」
(だって、呉さんのファンミーティングですから)

また、それだ。
あの日と同じように、当たり前のことみたいに言う。
それから、少し考えるように続ける。

「其实,我才应该谢谢你们」
(本当は、私の方がお礼を言わないといけないんです)

「嗯?」
(ん?)

奈緒は小明を見た。

「跟你们合作以后,我真的觉得,你们是个很厉害的团队」
(みなさんとお仕事して、本当にすごいチームだなって思いました)

小明が笑う。

「怎么突然夸我们?」
(どうしたの、急に褒めて)

「不是突然。我一直这么觉得」
(急じゃないよ。ずっと思ってた)

奈緒が笑って、それから俺を見る。

「吴先生能在第一线活跃这么多年,肯定也离不开团队的支持」
(呉さんが何年も第一線で活躍されているのは、チームのみなさんの支えも大きいんだろうなって)

奈緒は少し慌てたように付け加えた。

「当然,吴先生本人很优秀,这是前提」
(もちろん、呉さんご本人が素晴らしいのは大前提ですけど)

思わず笑って、うなずく。
ちゃんと伝わってるから、そんなに気を遣わなくてもいいのに。

「你们回复很快,遇到做不到的事,也会一起想别的办法」
(みなさん、返事が早いし、難しいことがあっても一緒に代案を考えてくれるんです)

小明が少し得意そうに俺を見る。
その顔に、また笑ってしまう。

「还有,不管我跟团队里的谁沟通,有一点始终没变」
(それに、チームのどなたとお話ししても、変わらないものがあって)

「关于吴先生的……怎么说呢,形象?还是核心?」
(呉さんの……なんて言えばいいんだろう、イメージ? それとも、芯?)

奈緒は考えながら、言葉を選ぶ。

「就是那个东西不会变」
(そういうものが、ぶれないんです)

「我觉得,那一定是因为整个团队都理解吴先生的想法,也知道什么对您来说是重要的」
(それってきっと、チーム全体が呉さんの考えを理解していて、呉さんにとって何が大切なのかを共有しているからなんだろうなって)

小明が静かになる。
俺も何も言えなかった。

そんなふうに見てくれていたんだ。

俺が表に立つために、小明たちがどれだけ考え、動いているか。
そこまで見てくれる人は、そう多くない。

奈緒は続ける。

「而且,我最感激的是,你们真的想把东西做好」
(それに、何よりありがたかったのは、みなさんが本当に良いものを作ろうとしてくれたこと)

「愿意理解品牌想做什么,再一起想办法,看看怎样才能做得更好」
(ブランドが目指すことも理解して、その上で、どうすればもっと良くなるかを一緒に考えてくれて)

奈緒はまっすぐ俺を見る。

「我真的很喜欢这样的工作方式」
(私、こういう仕事の仕方がすごく好きなんです)

良いものを作る。
それは、俺も小明たちも、ずっと大事にしてきたことだ。
何かがすとんと腑に落ちた。

立場も、守るものも違う。
それでも、同じものを大切にできる。

「所以,真正觉得合作起来很轻松的,其实是我」
(だから、本当に仕事がしやすかったのは、私の方なんです)

奈緒が笑う。

「吴先生,小明,谢谢你们」
(呉さん、小明、ありがとうございます)

小明がすぐ笑った。

「怎么变成互相感谢大会了」
(なんでお互いにお礼を言い合う会になってるの)

奈緒が吹き出す。
俺も笑った。