好きになる前に、恋人になった――いつか、君につながる

――凱――

俺と小明は先に店に着いていた。

ここは、事務所のみんなとよく来る店だ。餃子が美味くて、個室でも堅苦しくない。

席に着くと、小明がすぐに身を寄せてきた。

「那个……你要来的事,我还没跟她说」
(あのね……あなたが来ること、まだ彼女には言ってないから)

思わず笑う。

「不好说吗?」
(言いづらかった?)

小明が肩をすくめる。

「当然不好说啊。本来就约了我们两个女生,你突然来了,她肯定会拘谨」
(言いづらいに決まってるでしょ。もともと女2人の予定だったのに、あなたが急に来たら、絶対気を遣うもの)

「说不定还会说,下次再约」
(また今度にしようって言うかもしれないし)

それは困る。

……ん?
そこまでして会いたいのか、俺。

「所以我只跟她说换了地方」
(だから、場所が変わったとしか言ってない)

「嗯」
(うん)

小明は少し視線を落としてから、俺を見る。

「我是真的很喜欢奈绪。今天本来就很期待跟她好好聊聊天」
(私、本当に奈緒のこと気に入ってるの。今日はゆっくり話せるのを楽しみにしてたのよ)

「不过,刚才你那样,真的很少见」
(でも、あんなあなた、本当に珍しいから)

「所以我才让你来」
(だから来てもいいって言ったの)

「嗯。谢谢你」
(うん。ありがとう)

少し笑って、付け加えた。

「不会打扰你们的」
(2人の邪魔はしないから)

小明がふっと息を吐いた。

「最好是」
(そうしてよね)

その言い方に笑ってしまう。
そのとき、小明のスマホが震えた。

「啊,奈绪到了。我去接她」
(あ、奈緒着いたみたい。迎えに行ってくる)

「嗯」
(うん)

小明が個室を出ていく。
俺は、なんとなく座り直した。

……何してるんだ、俺。

少し緊張している。
仕事柄、人前に出る緊張にはもう慣れているのに。
今日はただ、一緒に食事をするだけだろ。

廊下から小明の声が聞こえた。
それから、奈緒の声。

話し声が近づいてくる。

無意識にドアを見る。
足音が止まった。
そして、ドアが開いた。