希幸が眠り始めて40分も走ると、故郷が見えて来た。


見慣れた景色は昔と何一つとして変わってはいなかった。


私はこの街で育った。
色んな事があった。


実家の近くのバス停で降りる。
すると気持ちが引き締まって背筋がピンと伸びた。希幸はまだ眠そうに目を擦っている。


さて、行こうか。


顔をあげて歩き出そうとした瞬間、目の前に人が現れた。


「……のんき…」


私と希幸の目の前に立っていたのは、大人になったのんきだった。