今まで出会って来た男たちは、私の上をただ通り過ぎた。 最後の恋 そう思えた凌でさえ、私の上を通り過ぎてしまうのか。 あれから私はどうにか家までたどり着き、お風呂に入って髪を乾かして、はげかけたネイルを落として、新しい服に着替えた。 それから茶の間に行き、 「お母ちゃん!腹減った!」 といつも通に振る舞った。いつも通りに。 笑顔だった。もう泣いたりしなかった。あの日の海に、自分を捨てて来たからだ。