家には帰りたくない。 もうどこへも行く気がしない。 家も、店も、公園も、レンタルビデオ屋も、スーパーも、歩いてきた道も、どこにでも凌がいるからだ。 話しをきちんと聞けば、こんな夜にはなっていなかった。一人雨の中を歩く夜道は淋しい。 けれどあの女の人の痛い程の眼差しと、悲しい目をした凌と二人の姿がどうしても頭から離れなかった。 雨に流れて消えてしまえ。全部、全部消えて無くなれば、また笑える日々を取り戻せる。