世界で一番わがままな君とガラスの心臓

「十四秒二八——」

タイムを読み上げる顧問の先生の声と同時に、乾いた電子音がグラウンドに響いた。

「風花、後半ちょっとフォームが硬かったぞ。肩の力を抜け」

「……はい! ありがとうございました!」

頭を下げてトラックから外れると、溜め込んでいた息が一気に吐き出された。



じりじりとアスファルトを焼く真夏の太陽が、容赦なく私の頭上に照りつけている。ポニーテールに結んだ髪の毛先から、汗のしずくがポタリとトラックの赤土に落ちて、一瞬で蒸発した。


自己ベストには、ほど遠い。


高校に入ってから、もう何回目の足踏みだろう。中学の頃は「走れば走るほど速くなる」のが当たり前だったのに、高一のこの夏、私のタイムはまるで透明な壁にぶつかったみたいにぴたりと止まってしまっていた。

(どうして……もっと足が出ないんだろう)

胸の奥が、焼けるように熱い。


ただ走ることが好きで、風を切る感覚が好きで陸上部に入ったはずなのに、最近はトラックに立つたびに嫌な焦りが胸を締めつけてくる。