世界で一番わがままな君とガラスの心臓

「きゃっ、ちょっと風花——!?」


私は手に持っていたカバンを投げ捨て、弾かれたように駆け寄って明日に抱きついた。


「苦しいわよバカ! 心臓止まったらどうすんのよ! 離しなさい!!」


「嫌だ! 離さない! 生きてる……明日が、生きてるよぉ……っ!!」


暴れる明日の華奢な身体を、折れてしまいそうなほど強く強く抱きしめた。


腕の中から伝わってくる、確実で、温かい心臓の鼓動。トックン、トックン、と。


あの突堤で一瞬失われかけた命のリズムが、いま、確かに私の胸に響いていた。


明日は最初はキーキーと騒いでいたけれど、やがて諦めたように溜め息をつくと、私の背中にそっと細い手を回してきた。