世界で一番わがままな君とガラスの心臓

視界が一瞬で開け、駆け抜けた余韻のまま芝生へと倒れ込む。


見上げた空は、吸い込まれそうなほど深い西伊豆の青だった。


「ひ、十三秒二八……!? 嘘だろ、十三秒二台が出たぞ!!」


大工原先生がストップウォッチを二度見し、信じられないというように叫んだ。


部員たちが「風花、ヤバすぎるって!」「県大会の優勝ライン超えてるじゃん!」と歓声を上げながら駆け寄ってくる。


自分のタイムを聞いた瞬間、私は芝生の上で大きく胸を上下させながら、込み上げる熱いものを抑えきれずに笑った。


十三秒二八。


かつての自己ベストをコンマ六秒以上も縮める、圧倒的な記録。


スランプという名の壁は、もうどこにも存在しなかった。