世界で一番わがままな君とガラスの心臓

ドライブフェーズからスムーズに上体を起こし、力強いピッチで加速していく。


風が、私を包み込む。


かつて自分を縛り付けていた不安も、迷いも、罪悪感も、すべてが圧倒的なスピードの彼方へと置き去りにされていく。


(もっと……もっと速く……下田まで届くくらい……っ!)


耳元を通り抜ける風の音が、荒々しい歓喜のシンフォニーのように聞こえる。


心臓が、胸の中で壊れた時計のように激しくトックン、トックンと音を立てていた。


この鼓動は、私だけのものじゃない。


明日の命の火花が、東京へ旅立った湊先輩の覚悟が、私の心臓を後ろから押し続けているのだ。


風と光を感じながら私はゴールの白線へと飛び込んだ。