世界で一番わがままな君とガラスの心臓

スパイクの金属ピンが、トラックの赤土へザクッと力強く食い込む。


屈み込み、手首をほぐしながら息を整える。


視線の先には、一直線に伸びる百メートルのレーンと、その向こうにあるゴールライン。


かつての私は、このスタートラインに立つたびに迷っていた。


『明日は走れないのに、どうして私だけが自由に風を切って走っているんだろう』


『自分が自己ベストを出して喜ぶのは、明日に申し訳ないんじゃないか』


可哀想な親友への、無意識の同情。


それは優しさなどではなく、自分の限界から逃げるための身勝手な言い訳に過ぎなかったのだ。


けれど、今の私には分かっている。