世界で一番わがままな君とガラスの心臓

あのアタックの夜、ICUの重い扉に阻まれた私たちは、結局一度も明日の顔を見ることができなかった。


三日後、彼女は厳重な医療機器に繋がれたまま、下田の総合病院へと転院していった。


直接「ごめん」と言すことすら許されなかった不完全な別れ。


下田の病院へ移ってからも、面会制限は続いていた。


明日のご両親から大工原先生を通じて伝えられるのは、「集中治療室で厳しい状況が続いている」という無機質な経過報告だけだった。


明日は今、下田の病室で一人、暗闇の中で運命と戦っている。


生きていてくれているのか、今この瞬間にどんな思いでいるのかすら、私には確かめる術がなかった。


(……だからこそ、走るんだ)