世界で一番わがままな君とガラスの心臓

九月に入り、町を包む空気の層がほんの少しだけ薄くなった。


潮風に交じる秋の気配と、傾きかけた西陽が作る長い影。


けれど、学校のグラウンドを照りつける太陽は、依然として容赦なくアスファルトや赤土のトラックを焼き続けていた。


「風花、そろそろ一本行くぞ! 集中しろ!」


「はいっ!」


顧問の大工原先生の力強い声に、私はポニーテールをきゅっと結び直し、スターティングブロックへ向かった。


あの日——嵐の突堤で明日が倒れた夜から、三週間が経とうとしていた。