世界で一番わがままな君とガラスの心臓

私はホームへと続く階段を見つめながら、手の中の写真——あの日、命を燃やした明日の笑顔を固く握りしめた。


「さよなら」すら言えないまま、下田の病院で戦っている明日。


自分の未来へ向かって、東京へと旅立っていった湊先輩。


私だけが、この伊豆の地に残されたわけじゃない。


私には、私にしか果たせない役割がある。


(見ててね、二人とも)


ポニーテールをきゅっと結び直し、私は下田駅の改札を背にして歩き出した。


直接会えないのなら、言葉を交わせないのなら、私が風になるしかない。


この脚でトラックを駆け抜け、最高のタイムを叩き出して、下田の病室にいる明日に、東京にいる湊先輩に、私の命の叫びを届けてみせる。

改札を出ると、雲ひとつない伊豆の青空が広がっていた。


秋の澄んだ風が、私の背中を強く、優しく押し続けていた。