世界で一番わがままな君とガラスの心臓

直接「さよなら」も言えないまま下田へ運ばれてしまうとしても、私と明日の繋がりは絶対に切れはしない。


(絶対に、届かせる)


心の中で、何度も、何度も唱えた。


私には、まだやらなきゃいけないことがある。


明日が命を懸けて自分に見せてくれた「今」の凄まじさを、私はトラックの上で証明しなきゃいけない。


直接会って言葉を交わせないのなら、私が風になって、私の走り(タイム)を下田の空まで届けるんだ。


病院の窓の外が、うっすらと白み始めていた。


台風が過ぎ去った西伊豆の空に、新しい朝の光が静かに差し込んでくる。


消毒液の匂いが満ちる白い廊下で、私たちは扉の向こうにいる明日の「目覚め」を信じ、二度と届かないかもしれない「さよなら」の代わりに、握りしめた手に祈りを込め続けていた。