世界で一番わがままな君とガラスの心臓

赤いサイレンの光が、雨と潮風に濡れた救急車の窓ガラスを不気味に滑っていく。


搬送された市立病院の玄関をくぐった瞬間、鼻を突いたのは、冷たく乾いた特有の消毒液の匂いだった。


突堤の潮騒や火薬の臭いとは完全に遮断された、無機質で静まり返った白い世界。


その長い廊下の奥にある集中治療室(ICU)の重い扉の上に、赤く『処置中』の文字が点灯していた。