世界で一番わがままな君とガラスの心臓

湊先輩がポケットからスマートフォンを引っ張り出し、震える指先で発信ボタンを押した。


「もしもし! 救急ですか!? 人が倒れて……場所は、サンセットビーチの東端の突堤です! 早く……早く来てください!!」


湊先輩の叫び声が、風に煽られて夜の海へ消えていく。


私は明日の手を握りしめたまま、必死に彼女の顔を見つめ続けた。


「明日、聞こえる!? 私だよ、風花だよ! 目を開けてよ!!」


明日の瞳が、うっすらと開かれた。


けれど、その大きな黒目には、もう何も映っていなかった。


満月の光も、私の顔も、湊先輩の姿も。焦点の定まらない瞳が、空虚に夜空の暗闇を彷徨っている。