世界で一番わがままな君とガラスの心臓

「……湊先輩」


波音と打ち上げ音の重低音が響く中、明日の細い声が落とされた。


私はハッとして隣を見た。


明日は、胸元でカメラを抱えたまま余韻に浸っていた湊先輩の服の袖口を、小さな指先でぎゅっと掴んでいた。


掴んだ手は白く固くなり、震えている。


けれど、風になびく黒髪の間から覗くその顔には、もう涙はなかった。夕空の余光と火花の赤を反射させた瞳が、まっすぐに湊先輩を見つめている。


「明日ちゃん……?」


湊先輩が驚いたように振り返る。


明日は逃げ出すことも、顔をそむけることもしなかった。


重ねた手の温もりが、硝煙の混ざる風のなかで二人を繋いでいる。