世界で一番わがままな君とガラスの心臓

波音と風の音が吹き荒れる暗闇の中で、時計の針が静かに、カウントダウンを刻み始めていた。

「……あと、十秒」


湊先輩の声が、荒れ狂う風の音を切り裂いて届いた。


懐中電灯の微かな赤い光の下、湊先輩の指先が小型バッテリーのスイッチへ深くかかっている。


私の隣で、明日の細い手が私の指を壊れるほどの力で握り返してきた。


伝わってくるのは、刺すような冷たさと、それとは裏腹な激しい体の震え。


「五、四、三——」


カウントダウンが夜の海に響く。


高波が突堤の側面を叩き、真っ白な飛沫が私たちの頭上をかすめて舞い散った。


「二、一……行けぇっ!!」