世界で一番わがままな君とガラスの心臓

雲の動きが異様なほど早く、夕焼けの朱色と黒雲が混ざり合い、空全体が赤紫色の不穏なまだら模様に染まっている。


「天気図を見る限り、一番風雨が強まるのは明日の深夜から明け方だ。三十一日の23時なら、まだ暴風域に入る前……ギリギリ決行できる」


暗室から出てきた湊先輩が、濡れたタオルで手を拭いながら静かに言った。

その首には、いつもの一眼レフではなく、雨対策の防水カバーが装着された重厚な機材が下げられている。


「やるのよね? 台風ごときで日よけするくらいなら、最初からこんなこと計画してないわ」


奥の作業場から姿を現したのは、明日だった。