世界で一番わがままな君とガラスの心臓

国道沿いの電気屋の店頭モニターや、ラジオのスピーカーから、無機質な女子アナウンサーの声が繰り返し流れている。


『台風12号は勢力を維持したまま北上を続けており、明日三十一日の夜から明後日にかけて、伊豆半島に最接近する見込みです。沿岸部では強風や高波に厳重に警戒してください——』


強い湿り気を帯んだ潮風が、旧市街の路地裏を吹き抜けていく。


なまこ壁の角を折れるたび、木々の葉がザザザと騒がしい音を立て、遠くの海岸からは重く低い波鳴りが響いていた。


「まさか、台風が来るなんてね……」


一之瀬写真館の勝手口で、私は空を見上げた。