世界で一番わがままな君とガラスの心臓

「分からないフリなんて、もうしない。……明日ちゃんにとって、この花火大会がどれだけ大事なものだったか。どれだけの覚悟で、この夏を迎えてたか」


湊先輩の瞳にも、静かな決意の光が宿っていた。


首から下げられた一眼レフカメラが、明日の乱れた息に合わせて、カチリと小さく胸元で音を立てる。


「誰も上げないならさ」


湊先輩の低く通った声が、静まり返った和室に響いた。


「俺たちが上げようよ」

「……え?」


明日の涙に濡れた長いまつ毛が、ピクリと揺れた。

叩くのをやめた手が、湊先輩の服の胸元を掴んだまま止まる。


「大人たちが諦めたなら、俺たちでやればいい。海咲町の海に、明日ちゃんのためだけの花火を上げよう」