世界で一番わがままな君とガラスの心臓

「まったく……。湊先輩も、いちいち路地の雑草なんて撮ってないで、さっさと日陰に入りなさいよ。都会の人が物珍しそうにジロジロ見ると、町の妖怪が目覚めるわ」


「雑草じゃなくて、なまこ壁の隙間に咲いてるスミレだよ。たくましいなと思ってさ」


湊先輩は楽しそうに微笑みながら、カメラのシャッターを切った。


明日が毒を吐いても、誰も嫌な顔をしない。


こんな風に三人で旧市街の静かな時間を分かち合うことが、いつの間にか私たちの当たり前の日常になっていた。


けれど——その穏やかな空気は、商店街の中央にある掲示板の前で、ふたりと途切れることになる。


「——はぁ。やっぱり、今年はダメだったか」