世界で一番わがままな君とガラスの心臓

西伊豆の旧市街。


白壁となまこ壁が続く古い路地裏で、茅野家と橘家は目と鼻の先にあるお隣同士だった。


茅野家は、この辺りではちょっとした有名だ。昔はかなりの地主だったらしく、今でも町内にいくつかアパートや駐車場を所有している、いわゆる「名家」の類だった。


対する我が家——橘家は、父さんが地元の会社に勤める至って普通の家庭。けれど両親同士の仲が良く、お裾分けを行き来させるような気さくな付き合いが昔から続いていた。



私が茅野明日(あかり)という少女と出会ったのは、まだ小学校に上がる前のことだ。